Delphi 6をWindows 11で使う 2025年10月29日更新

 

私はPascalを Turbo Pascal 3 以来色々Borland製品を購入して使用して来たが.Netを使わないWindowsデスクトップアプリを作成するには Delphi 6 で十分だと思う。ネットに書かれているのを見ると一応Windows 11にもインストールできるらしい.。しかし古いいソフトをCD-ROMからインストールして環境を汚したくない。かつて使用していたWindows XPを仮想環境にした中に Delphi 6 Professional がインストールしてあるのだが、そのファイルとレジストリーとをコピーして使えるかどうか試してみた。今は Free Pascal/Lazurus をメインに使っているのでDelphi 6が必要ということでもないのだが。

 

【I】 コマンドラインコンパイラ dcc32.exe を使えるようにしてみる

私はコンソールアプリを作ることが多いのでまずはコマンドラインコンパイラー dcc32.exe だけでも使えるかどうか試してみた。簡単にできた。

Windows XPの Delphi 6 のインストール先から Bin フォルダーと Lib フォルダーとをコピーして来てWindows 11上に作成したフォルダーにコピーをした。BinフォルダーにはDelphi 6 IDEを含め色々ファイルが入っているが、最低限必要なファイルは
dcc32.exe の他には
rlink32.dll
lnkdfm60.dll
borlndmm.dll
delphimm.dll
dcc60.dl
のみだと思う。足りなかったらエラーが出るだろうからその時追加すればいいだろう。

それと dcc32.exe のコマンドラインオプションを記述しておくための dcc32.cfg があってもよい。その中にたとえば
-U"Libフォルダーの絶対パス;他の自作unitの保存フォルダーの絶対パス"
のように書いて置けば一々コマンドラインで指定せずに済む。
Binフォルダーにはパスを通しておく。

コンソールアプリだけでなくてGUIアプリもコンパイルできる。IDEでGUIアプリのフォームファイル*.dfmをバイナリー形式で保存する設定にしてあったとしても convert.exe でテキスト形式に変換できてエディターで編集できるので既存ソースを修正してコンパイルすることもできる。

Delphi 6のインストールCD-ROMにはフォルダー/ファイルが展開された状態で入っているのでそれを使うこともできるがアップデートがされていないことに注意。

 

【II】 IDEを含め Delphi 6 全体を使えるようにしてみる

以下、インストール先を Windows 11 の "C:\Program Files (x86)\Borland" ということにして書く。

  1. Windows XP の "C:\Program Files\Borland" フォルダーを Windows 11 の "C:\Program Files (x86)\Borland" にコピーし、"C:\Program Files\Common Files\Borland Shared" を "C:\Program Files (x86)\Common Files\Borland Shared" にコピーする。
  2. Windows XP の "C:\WINDOWS\system32" フォルダの中から Delphi 6 がコピーしたファイルを分離して Windows 11 を汚さないようにする。Windows 11 の "C:\Program Files (x86)\Borland" の中に "SysWOW64" フォルダーを作成してそこに入れることにした。CD-ROMの \install\system32 のファイルリストはこれ。それを参照すればよい。ただしアップデートで追加された soaprtl60.bpl と soaprtl60.map はリストに入っていない。
  3. Windows XP でレジストリー HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Borland と HKEY_CURRENT_USER\Software\Borland とをregファイルにエクスポートする。
  4. regファイルをテキストエディターで編集する。HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Borland のregファイルでは "HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE" を "HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\WOW6432Node" に全部置換する必要がある。また、インストール先のフォルダー名等も全部書き換える。さらに HKEY_CURRENT_USER\Software\Borland\Delphi\6.0 の LM は削除しておく。その後regファイルを開いてレジストリーに追加をする。
  5. 環境変数 Path に
    C:\Program Files (x86)\Borland\SysWOW64
    C:\Program Files (x86)\Borland\Delphi6\Bin
    C:\Program Files (x86)\Borland\Delphi6\Projects\Bpl
    を追加する。
  6. "C:\Program Files (x86)\Borland\Delphi6\Bin\delphi32.exe" を起動してみる。もしインストール番号とインストールキーの入力を求められてらCD-ROMが手元になくても HKEY_CURRENT_USER\Software\Borland\Delphi\6.0 に LMLIC と LMKEY として記録されている。使用許諾コードはもはやネットで取得できないので「後で取得する」でよい。
  7. 設定やレジストリ書き換えを行って動作するように調整する。環境を汚したくないという方針なのでActiveXのインストールはしておらずそれを利用したコンポーネントは動作しない。他にも起動しないツールがあるかもしれない。

 

【III】 使用許諾コードについて

上記のようにインストールした方でもCD-ROMから普通にインストールしても構わないという方でも使用許諾コードについては知っておく方がよいことがある。

公式の「使用許諾FAQ」というページを見ると現在ネットで使用者許諾コードは取得できないが「使用許諾コード取得代行を依頼」という方法は用意しているとのこと。しかし動作保証対象外のWindows 10/11では「使用許諾が完了したのに、製品を起動すると使用許諾ウィザードが表示されます」という問題が発生する。しかも「登録回数の上限」というものもあるので「使用許諾コード取得代行を依頼」も回数が制限されてしまうだろう。そのため使用許諾コードは「後で取得する」で使用を続ける。

ネット上にWindows 10で「後で取得する」にしても効かなくなることがあるように書かれていたが、その時にはレジストリー HKEY_CURRENT_USER\Software\Borland\Delphi\6.0 の LM を削除すればいいようだ。

 

【IV】 おまけ

かつて商用利用不可という条件で Delphi 6 Personal というソフトが公式ページ(インターネットアーカイブ)や雑誌付録でフリー配布されていた。インストールするには使用者登録が必要だが今では登録できないのでインストーラーを持っていてもインストールはできない。しかし今でもインストール無しでコマンドラインコンパイラーだけは使用できてしまうことがわかった。インストーラーはインターネットアーカイブにも残っていないので私が持っているものを勝手に転載した。ファイルサイズは公式ページ記載と一致しているがMD5等は書かれていないので怪しいと思う方は仮想環境やサンドボックス上でテストして下さい。

  1. Windows 11上でインストーラーを実行する。インストール先は任意の普通のフォルダーでよい。
  2. 下のダイアログボックスが出るまで進める。これ以上は使用者登録がないと進められない。


  3. ここで右上の X をクリックして終了してしまう。まだインストールは終わっていないがインストール先に dcc32.exe とそれを利用するために必要なファイルが揃っている。

 

<戻る>